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2005/03/20

町田市忠生2丁目斜面緑地(町田市所有地)の貴重性について

1.自然環境調査結果

 町田市所有の忠生2丁目斜面緑地約21,000㎡について、民間への売却による消失の可能性があるとの情報を得て、緊急に、植物を中心とした自然環境調査を行なった。調査地は谷戸地形を残す北東向きの斜面地であり、丘頂部からは人為的な埋め立てが行なわれているが、2つの谷の源頭部は原地形とともに清冽な湧水を奇跡的に残している。特に東側の谷は、ゴミなどがあるものの、人為的な改変はほとんどなく、景観的な側面においても自然性は非常に高いと言える。

(1)植生

 植生は、多摩丘陵に典型的なクヌギ・コナラ林が広範囲を占め、一部にシラカシ林、スギ植林を含む。クヌギ・コナラ林の主要な構成種は、コナラ、クヌギ、イヌシデ、ヤマザクラ、エゴノキなどであるが、エンコウカエデ、ホオノキ、ケヤキ、アブラチャンなど、谷筋を好む樹木をまじえているのが特徴である。樹林の状態は、林床にササ類の多い部分もあるが、全体に保湿性が保たれ、植生の貧化は見られない。南端部の埋め立て部の草地は、適度な草刈りがなされ、チカラシバ群落やヨモギ群落、ススキ群落など、在来草本を中心とした草地植生が広がっている。

(2)植物相、その他

 調査地内に生育する植物種を調べた結果、104種が確認されたが、冬季の1日の調査結果であり、春季や夏季の調査を加えればさらに生育種類数は増加するだろう。
(添付資料:植物目録参照)
 自然環境の質的高さを指標する植物として、タマノカンアオイ(*国RDB)、エビネ
(国RDB)、サイハイラン、ヨゴレネコノメ、
カラタチバナ等が見つかった。

(貴重な植物の分布図参照)

タマノカンアオイ

エビネ
サイハイラン
ヨゴレネコノメ
カラタチバナ

 とりわけ、国の絶滅危惧植物であるタマノカンアオイ(ウマノスズクサ科)が高密度で生育していることは特筆に値する。本種は、わが国で東京都と神奈川県、埼玉県の一部にしか産しない植物であり、多摩丘陵とその周辺にのみ生育する植物としてよく知られている。町田市は八王子市とともにタマノカンアオイの東京の分布の中心地にあたり、本来生育地も多く個体数も少なくなかったが、開発や盗掘によって著しい減少傾向が続いており、当地からさらに北部の広大な丘陵地においてもこれだけの密度の高い生育地は今やほとんどない状態である。

 タマノカンアオイは分布移動速度がきわめて遅く、地史との関連の深い植物であるために、移植をせず、現状の生育地で保全する意義がとりわけ大きい野生植物である。
 また、ヨゴレネコノメは、町田市内において、境川源流域を除いてはきわめて希であり、当地の湧水付近に数百株が群生していることは非常に貴重である。カラタチバナも同様に町田市内にはほとんど記録がなく、当会の市内植物調査では三輪地区に続く2例目の確認にすぎない。
      *国RDB:国基準の絶滅危惧植物

 谷筋では、水生生物を代表して随所にサワガニの生息を確認することができ、湧水成分が小動物の生息条件を満たしているものと推測できる。

サワガニ
全体景観

2.忠生2丁目の斜面緑地の重要性と保全提案

 当地の環境は外部からは視認しにくく、周辺住民でさえもその存在を把握していなかったものと思われるが、実際に現地にて調査を行なってみると、谷戸山の最小単位の地形と植生、そして源流の流れが一体的に残っており、自然性の高さを強く実感できる場所である。前述した貴重な植物の存在も、このことを裏付けるものであると考える。
 結論としては、どのような理由があるにせよ、このような貴重な場所を行政が保有しておきながら、再び民間に売却するような計画は、市民利益につながらないものであり、みどりの保全を重視する町田市行政として矛盾するものではないかと考える。
 現在の町田市が北部丘陵の広大なみどりを保全することを大きな行政課題とすることはもちろん重要だが、小面積であっても、市街化区域に湧水や貴重な植物の集合した場所があれば、これを積極的に保全していくこともまた、生物多様性の保全の観点からも重要な施策となるのではないだろうか。先にも述べたとおり、外周からは当地の環境を十分把握することはできず、詳細な調査を行なっていただければ、この小谷戸の貴重性、重要性が明らかにあると思われる。したがって、この残存する緑地部分の担保性を放棄するような計画は見直していただき、この場所の価値について、地域住民を含めて再検討をしていただくことをお願いしたい。
 また、南端部の草地も、地域に開放し、子どもたちの遊べる原っぱとすれば、公園では不可能な自然とのふれあいができる場となる可能性を持っている。町田市が先鞭を切って、野原(原っぱ)の価値を雑木林と同様に引き上げてほしいと思う。
 
  以 上
 

●添付資料

 ・貴重な植物の確認個体数と分布図
植 物 種 名  確認個体数
タマノカンアオイ    約45株
エビネ     1株
ヨゴレネコノメ   約600株
サイハイラン     4株
カラタチバナ     1株


貴重種位置図(クリックで拡大)

・植物目録
こちらをクリック

投稿者 satoyama : 2005年03月20日 17:19

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